経営者会報 60年12月号

インタビュー

門の技術と特殊な機械や洗剤を使って、早くきれいにやってあげるということです。

——なるほど。プロとしての掃除を店舗や一般家庭にもち込むということでしょうが、この仕事に目をつけられたのは?

軽い気持ちなんですけどね。高校の先輩から「汚れる商売はすたれない」って聞いたのがきっかけで…。

——すたれないどころか、業績推移を見ますと順調に伸びている…。

そうですね。まあ、業績推移はめちゃめちゃ順調といっていいでしょうね。でも、私自身がこれまで順調にやってきてますんでね、あんまりガクンとダメージ受けたりすることもなく……。

いい加減だけど環境適応力があるんです

——しかし、大学受験では仙台一高という進学校から2浪までして3度東大にチャレンジし、うまくいかなかった。もちろん自信はあったんでしょ。

現役、1浪のときはともかく、2浪のときはなかったですね。これで受かっちゃ悪いという気がした(笑)、勉強もしなかったし。
結局、ファザー・コンプレックスなんですよ。私のオヤジというのが、旧制二中(現在の仙台一高)から二高(東北大学)を経て帝国大学へ進み、検事などをやったあと、いまは弁護士をやっているんですが、オヤジには負けたくないといった気持ちで東大を受けたみたいなところがある。だから、むろん落ちたことはショックといえばショックなんですが、といってシュンとしてしまうほどのショックはなかった。

——で、すっぱり進学断念ですか。ほかの大学は…。

受けなかった。東大以外、行ったって仕方ないと考えていましたから。

——大学へ行って、卒業したらどんな仕事をしようといったことは考えていたんでしょう。

いやぁ、そんなこと考えちゃいませんよ。僕らってのは無気力、無感動、無関心の三無主義っていわれた世代で、私自身もあんまりバカでもなければ、とび抜けた秀才でもない、悪いことをしない代わりに、いいこともしないってところでしてね。東大を目指したのだって、何か夢があって目標にしたってことじゃなかった。いまの若者以上に熱くなかった。

——では、レジャー会員権の販売会社へ就職したのも…。

ええ、どこでもいいやという感じ。技術があるわけでないから企画か営業の仕事だというところで、セールスマンになったんです。
だいたい、ものごとを最初から、こうして、どうして、それからこうしようと計画的に考えるタイプじゃないんです。もう少し、年がいったら、「うん、若い頃はこんなことを考えていてね。で、こうしたんだよ」って喋るかもしれませんが(笑)、正直なところ、いきあたりバッタリなんです。
ただ、なんというか、環境に順応する力があるというか、現実を素直にみて、その中で、「では、どうしようか」と工夫するところはあるみたいです。

——その会社ではトップクラスのセールスマンだったと聞いていますが…。

そうですね。自社で所有するレジャー施設を利用できる会員権を販売するわけですが、最初はあまり売れなかった。
で、やっぱりそこで人間が変わったんですね、厳しい会社でしたから。年商70億円くらいの会社でしたが、朝8時過ぎから夜の11時くらいまで、みんなが理屈抜きで働いている。学歴関係なしの実力主義で、たしかに就業時間は長いしおかしいといえばおかしいんだが、おかしいと思うんだったらやめたらいいじゃないかという雰囲気。僕はブーブー言わなかった。こういうものなんだな、と思った。素直なんですよ(笑)。
で、入って10カ月で課長代理になり、預かった営業チームもどんどん伸ばし、私自身の年収も1000万円を超えましたね。自分で売るのは大してうまくないんですが、部下、といっても平均年齢三十数歳のチームでしたが、その年上の部下を教育し、ポイントを決めてやってフォローするといったマネジャー的なところはあったように思いますね。

ソフト化経済が当社の仕事を必要にした

——脱サラして5年、いまのハウスクリーニングの仕事は順調とおっしゃったが、なぜ御社のビジネスがそう繁盛するのか?

なぜですかね(笑)。

——たとえば主婦がものぐさになっているとか(笑)。

そうではないと思うんです。
まあ、理由はいろいろあるんでしょうが、うちはハイタッチ産業のつもりだから、感覚の部分でいうと、やっぱり第1の理由は女性が目覚めたということでしょうね。時間を有効に使い出した。家事にしても、しっかりやるところはやるが、手を抜くところは抜く。ワイシャツの洗濯と同じで、自分で時間をかけてやってもクリーニング店のようにきれいにできないとなれば、それは店に任せちゃって、その時間を趣味なりパートなりにあてて、支払った以上の価値を得ようとするようになった。
それに、物理的にできないですわね。私が子供の頃は町内そろって、年に1度や2度は全家庭が畳を上げて、障子を張り替えて、と大掃除をしていました。いま、家庭の中にはモノが溢れて、畳を上げるだけでも大変でしょ、テレビをどけてタンスをどけて…。
第3の理由としては、衛生観念の発達でしょうね。洋風建築になって密閉状態の部屋に住むようになった。その中で、昔は絨毯というとなんとなくリッチな気分になれて、きれいに見えてということで満足していたが、いまはそういいことずくめじゃないぞと考えるようになった。ダニやカビが繁殖しやすい、健康によくないと気づいたわけですね。
そして最後に大きな世の中の流れとして、経済のサービス化、ソフト化が進んでいることが見逃せない。流通業者がモノを売る時代は終わり、サービスを売る時代、サービスで差別化を図る時代になっているということですね。
その証拠に、こんな小さな会社に対して、業務提携のもちかけ話が沢山あるんです。
すでにタイアップしている例で言いますと、引っ越し運送業の丸全昭和運輸さん、段谷産業の子会社で住宅や店舗の増改築を主業務とするディンクスさん、食品の製造販売、スーパー、レストラン、そしてレジャー業のチェーン展開を行なっているさくらグループさん等々数社ありますが、結局、激しい競争の中で差別化を図るのに、私どものような仕事が必要とされてきているんですね。

——自社内だけでは勝ち残るための差別化戦略も見出しにくくなっている、と。

ええ、独りよがりの差別化じゃなく、異業種交流によって、たとえば引越し業者さんもハウスクリーニングというサービスを付加して同業者に差をつけよう、と考えてきているわけです。