実業界 昭和59(1984)年3月号

シリーズ異色の若手経営者
『トータル・サービス』社長
山口 恭一氏

総合クリーニングで全国制覇を狙う男

今や、家もプロにクリーニングしてもらう時代。「あと5、6年もすれば当り前になる」と強調するのは、この業界で一際異彩を放つ経営ぶりを見せている『トータル・サービス』の山口恭一社長、28歳。システム化されたノウハウで全国に60店舗を展開。「3年後には500店を展開し、全国規模の流通機構を築く」を鼻息も荒い。

総合クリーニング業界は、大手と呼ばれる白洋舍、ダスキン、サニーペットなどのほか数多くの業者が参入し、今や群雄割拠の様相を呈している。
こうした中にあって、一際注目されているのがトータル・サービスだ。
いったい、総合クリーニング業とは、どんな商売なのだろうか—。
「清掃に関することなら何でも引き受けます。ビルやマンションの外壁のクリーニングや塗りかえ、浄化槽・受水槽のクリーニング、店舗の看板、そして一般家庭のジュータン、ソファー、シャンデリア、風呂釜に至るまで電話1本いただければ出張してクリーニングします。さらに、自動車や墓石等のクリーニングやテフロン加工業務、他社では手掛けていないゴキブリ等の害虫駆除、消毒業務まで行っています」
聞いてみると、クリーニングに関しては出来ないものはないというほどの業務内容である。
今や、数多くの機能的な機械とノウハウを携えて、大きく飛躍を遂げている。
山口恭一氏は昭和30年7月30日、福島生まれの28歳。大学進学をめざすが、2浪した後進学をあきらめ、レジャー会員権を販売する会社に入社。若くして課長に抜擢されるほどの手腕を発揮し、年収1000万円を得るまでになる。しかし、母親が病気になり田舎へ帰ることがたびたびあって成績不振になり、係長に降格された。その頃、先輩から「人のいやがる仕事、汚れる仕事はすたらないよ」というアドバイスもあって、独立を決意し、3年半勤めた会社を辞める。
「最初はとにかく単純に、汚れる商売でしかもお客さんを回転させる商売をやろうと考えたんです。それで大手の会社ではやらないような店舗の看板やテントのクリーニングから開始しました。当時は10人ぐらいの会社になれば最高だなと思いました」
かくて55年1月に山口商会を設立。前の会社で一緒に仕事をしていた2人の仲間をさそってスタート。当時、事務所があった高田馬場の商店街を中心に、デッキブラシと洗剤をかついで仕事に精を出す。しばらくして、一般家庭の室内クリーニングも始める。55年4月からは害虫消毒を開始、56年3月には会社の名称を(株)トータル・サービスに変更、そして57年5月から、それまでに培ったノウハウを持って代理店募集を開始して、またたく間に全国60店舗を有するまでになった。
昔からフランチャイズ展開は多店舗化への安易な方法として行われてきたが、その進展にともない、いろいろの問題がおこった。そのため本部と加盟店のトラブルに発展、その多くは「なんでロイヤリティを払うのか」「加盟しても、もうからない」という不満といっても過言ではない。
「当社では加盟店になるに当たって、加盟金、保証金、ロイヤリティなどは一切取りません。クリーニング機械と洗剤のセットだけの資金で開業できるんです。と言うのも、長い目で見た場合、少しばかりのロイヤリティを取っても、正直言って、こんな商売はだれにでも出来る商売ですし、すぐに儲けられます。それより、ロイヤリティは取らないかわりに、当社で開発した洗剤や機械、アフター商品を買って下さい、としたわけです」
同業他社はクリーニング機械を売って得られる利益で運営されている。このため、加盟店がいったん機械を購入してしまえば、あとは放ったらかしの状態がほとんどだといわれる。この点でも、同社は違う。

アフター商品導入が成功の決め手

「当社もはじめは開業者だったわけで、ずいぶん無駄なお金を使いました。高価な割に汚れが落ちない機械を買わされたりしましてね(笑)。でも、いい機械や洗剤を揃えるには、いろいろ買い集めて実際に試してみるしか方法はないわけです。ですから、さまざまな機械や洗剤を取り寄せては自分たちで研究し、改良、開発を行ってきたわけです。今でも、機械や洗剤を売るだけで、その後のアフターケア、つまり、どう注文を取るかについて指導しているところはほとんどありません。
開業者にとっては、この点が非常に不安なんですね。私もいろいろと苦い経験をしましたので、開業するに当っての指導には万全を期しています」
同社の指導体制はキメ細かく徹底している。つまり、
「私どもが現場で培ってきたノウハウを手取り足取り教えます。実際のクリーニングの現場で機械の操作、洗剤の配合、汚れの落ち具合いなどを、ウチの社員について、自分の目で確かめてもらい、機械や洗剤の使用方法を学んでもらいます。この期間は、自分が納得するまで何日でもかまいません。また納品の時には指導員を派遣して、さらに指導を行っています」
こうした研修はすべて無料で行われる。さらに、現場で何か問題が起った場合、本部に連絡すれば、すぐに指導員が派遣されるシステムとなっており、同社の指導ぶりは徹底していると言える。素人が開業する場合でも全く不安はないと言える。
では、注文を取る方法はどうなのか。同社では、得意先開拓と固定客づくりのための戦略として、アフター商品を導入している。
「クリーンなイメージのものならんでも」扱う。芳香剤からユニフォーム、エプロン、ドレス、事務服、消臭剤、さらに防カビ用のファラオン・シートなど、顧客開拓の切込道具として扱っている。
「注文を取るためには、何度もマメに足を運ぶ必要がありますが、なかなか同じ所へ何度も行きづらいものです。そこで、再訪の際の理由づけをつくり再訪しやすくするためにアフター商品を導入したわけです。
これらの商品を扱うことで当然クリーニング以外の利益も上がるわけです。こうした商品は無限ですから、流通機構があれば、宣伝費をかけないでも売れます。
要するに、クリーニングの顧客を対象に、さまざまな独自の商品を流し、全国規模の流通機構を築くことが私の最大の目的なんです。代理店を通して販売するので、代理店も利益を得られるわけです。ですから、本業からは利益はもらいません。それ以外の商品で本部と代理店の双方の利害を一致させていこうじゃないか、と思っているわけです。逆に代理店がいい商品を開発したら、それを本部経由で全国に流してもいいでしょう」
つまり、代理店をアフター商品を開発するにあたってのアンテナ、情報源にしていくという考えが含まれている。
同社は近い将来、広告の制作、商品開発、イベントの企画を行う企画会社をつくり、そこを本拠にしたいようだ。
「また何か始める時に、一から代理店を作る必要はないように、今までの代理店を拡散することで代理店をふやすことも出来ます。そんなことで今、一所懸命がんばって