日刊スポーツ 昭和61年(1986年)10月7日 火曜日

成長企業の社長直撃 ビジネスヒットマン

ハウスクリーニング・トータルサービス社長
山口恭一(やまぐちきょういち)さん31歳

会社メモ

◆トータル・サービス 昭和55年、山口商会を設立。56年3月、商号をトータル・サービスに変更、57年5月、組織を法人化。資本金800万円、年商5億円(60年度=東京本部)、社員25人。店舗、一般家庭を対象としたクリーニング業。本社所在地=東京都新宿区西新宿7の5の10。グループ名はトータルライフグループ。

害虫駆除で大当たり「汚れる商売はすたりがない」

「僕はどんなことでも決してマイナス発想はしない。プラス、そうプラス発想を心がけている。必ず成功するんだという思い込み、これに尽きますネ」。
31歳の独身青年実業家、山口恭一社長は実に歯切れがいい。若さが168センチ、60キロの体に満ちあふれている。「10年ひと区切り。会社が10周年を迎える6年後には社長を退いて会長の座に就きマクロの目で、会社を見つめ、そして新しい何かを模索したい」。攻撃型人間である。
ハウスクリーニングとは簡単にいえば店舗や一般家庭を対象とし、家庭でいえば主婦に代わって居間、台所、浴室、トイレなどの掃除を引き受ける業種。日本ではまだ歴史が浅く、ニュービジネスの一つだ。これが兼業主婦の増加など消費者ニーズを的確にとらえ大当たり。昭和55年、アルバイト2人を加えた3人で、「100万円は母親からの借金」という資金170万円を元手に東京・高田馬場に設立した出張クリーニング業山口商会が今や、加盟店105社、地域本部10社を抱えるまでに成長。グループ年商20億円(60年度)を誇る。
「汚れる商売はすたりがない」。仙台一高の先輩の、このたったひと言が人生の転機になった。
山口社長は東大受験に2度失敗。「食べるため」にと新聞広告を見て、都内のレジャー会員権販売会社に入社した。いわゆる飛び込みセールスである。一時は年収1000万円を稼ぐ有能営業マンだったが、「セールスの仕事に飽き足らなくなり、何となくむなしさを感じた」という。人間は正直な動物、むなしさを感じた途端、成績は下がり課長からヒラに降格させられた。そうした時、出会ったのがくだんの先輩だった。
「成功の裏話は美化されがちだけど、僕の場合もそうで、本音を言えば何となく始めたんですよ。他の業種と違って事務所とか、資金、人間なども、そう必要ではないから。山口商会時代は自ら、看板や事務所の窓ガラスふきなど、泥まみれだった」。大当たりしたのが害虫駆除。クリーニングを請け負った見返りとしてサービスで始めたものだが、急成長した山口商法の一つでもある。
クリーニングといっても今は建築様式、素材の変化で素人の手に負えない点もある。市場は確実に伸びる。基礎固めを終えると、高い所を掃除する「ロングポリッシャー」などのクリーナー、ジュウタン用シミ抜き洗剤などを開発、レンタル化、販売も手がけている。そして、加盟店、地域本部からはロイヤルティー(経営指導料)は一切とらず、加盟店の場合、会費の名目で月3万円だけ。これも山口商法。若い頭脳は次々と新しいアイデアを生んでいる。参考までにハウスクリーニングの標準価格は畳1畳400円、ガラス(サッシを含む)1平方メートル1050円……。
【三角】

「決してマイナス発想はしない」と山口恭一社長

金銭哲学

使う時はプラス、マイナスを納得ずみで大胆に。使ったあとで悩むようなことはしたくない。お金は数字(業績)の結果、商売をやっている以上は入ってこないとダメ。

経営理念

自分が置かれた現状を常に肯定してプラス発想する。失敗したらなど、否定的なことは一切考えない。アクシデントはつきものと割り切り、いかにそれを乗り越えるかだ。突き当たった壁は避けず、乗り越えていく。

履歴書

  • 生まれ 昭和30年7月30日、福島県福島市
  • 現住所 東京都中野区。3LDKマンション
  • 学歴 宮城・仙台一高卒
  • 職歴 20歳の時、日本観光サービス入社も6年で退職
  • 趣味 「仕事で人に会うこと。しかし、生産性のないものはダメ」。ゴルフ、ハンディ28
  • 車 ソアラ。約360万円
  • 家族 独身。「結婚? 明るくて素直な女性。たとえば夏目雅子(故人)」
  • 父・年男さん(68=弁護士)、母・ヨシエさん(56)、妹1人
  • 年収 「同年代の上場企業のサラリーマンのX倍」
  • 血液型 A