NIKKEI VENTURE 1995.7

企業家精神溢れる経営者のための日経ベンチャー

野田由紀子●米国ベンチャー企業との各種提携、投資案件を数多く手がけ、会員企業向けに米国ニュービジネス情報の提供、コンサルティングを行っている。野田さんは「日本もクリーンビジネスが大市場になる」と予測する

中途半端な日本流アレンジは危険

野田
日本のマーケットがアメリカに追随していくとはいえ、国民性とか趣味、文化に立脚しているビジネスを、そのまま導入するのはむずかしいでしょうね、特に教育の分野などは。

山口恭一
教育でもコンピューターや幼児関係のものは可能だと思う。私は法律や宗教はむずかしいと思っています。教会のマネジメントをするビジネスなんて、それこそ手も足も出ない。(笑)

野田
規制の違うものもむずかしいでしょうね。それでも環境などは、これから日本でも強化されていくからいいとしても、医療などはハードルが高い。

山口恭一
アメリカでは当たり前の、個人で呼ぶ救急車も、すぐにはムリでしょうね。日本では119番で無料だと思っているから。
逆に、日本にあってアメリカにないのが車検のFC。出張オイル交換は、日本では油を持ち歩くのがダメだから許可されません。不思議なことも多い。

野田
そうしたギャップを克服してアメリカからFCを導入するには、日本流のアレンジが必要ですか。

山口恭一
結果的にはありますが、持ってきたら、まずその通りにやったほうがいい。そのうえで、どこが違うかをはっきりと出して、それから変えていくべきです。十分なテストもしないで「これは違う」と中途半端にいじってしまうと、本当に悪いところがわからなくなる。車を買って、走らせ、それからいじらないとダメなのと同じですよ。

野田
そのテストは、FCを募集する前に、本部で行うのですか。

山口恭一
テストマーケティングでも全部がわかるとは限りません。FCを募集し、実際にビジネスを始めてから手直ししていくものもたくさんあります。フランチャイジーからの情報も入るようになると、本部がたいした問題ではないと思っていたものが実は重要な問題だったり、問題だと思っていたことがそうでない場合もある。だから最初のフランチャイジーはリスクがあるかわりにロイヤリティも安い。

野田
最初のマーケティングを共有するわけですね。

山口恭一
本部は、最初のフランチャイジーは絶対に成功させようと、ロイヤリティや開業資金を思いきって安く設定してくる。
私もアメリカで、新しいビジネスを検討する際には、そういう目で見ます。すでにメジャーなところは権利金もロイヤリティも高い。契約内容の変更なんてとんでもない。成功率は高いかわりにうまみは少ない。その代表的なのがディズニーランドですよ。
私の場合、高いものを1つやるのと、同じ開業資金でメジャーになる可能性のあるFCに、安いうちに早めに加盟して3つぐらいやりますね。(笑)

FC導入には、言葉とネットワークの壁を乗り越えよ

野田
山口恭一社長は、年間4〜5回はアメリカへ出張して、いろいろなFCビジネスをご覧になっておられるそうですが、クリーン・ビジネス以外で魅力あるものがありますか。

山口恭一
やりたくてもやれないが、おもしろそうなものはたくさんありますよ。例えば就園前の子供を対象とした右脳教育FC。3歳ぐらいまでの障害をもつ子供のリハビリから、幼児のリズム感を育てるプログラムまで、これはすばらしい。約30坪の部屋で親子を器具や音楽、ゲームで一緒に遊ばせるんです。週に1〜2回で1,000円ぐらい。これはフランチャイジーの収入になる。本部はどこでビジネスになるかというと、そこで使うスポーティーな衣料を売るんです。子供服のアウトレットもFCとして魅力がある。子供はすぐ大きくなるから回転が早い。有名ブランドを激安で売るわけです。大人のホビーのFCも興味がありますね。日本ではこれからの市場です。

野田
FCビジネスを日本に導入するにあたって、むずかしい点は?

山口恭一
中小企業にとって、言葉とネットワークの壁は大きいですよ。契約書、マニュアルを直訳できても、アメリカの事情をふまえて翻訳できる人は少ない。いろいろな情報を得るためには、アメリカの中へエージェントを作っていくことが不可欠です。中小企業がそうしたことをゼロからやるにはばく大な時間とお金がかかります。だから、アメリカからよさそうなビジネスを持ってくるのは大企業になってしまう。モノを売るFCに比べ、サービスを売るFCは、特に大切ですね、言葉の問題は、うちの場合でもアメリカから5つのビジネスを導入していますが、ひとつを導入するのに短いので〓年、長いものは5年かけています。これは皆さんが行かないから、ゆっくりやることが許されているんですが、そうした障害さえ乗り越えたらまだまだビジネスチャンスはたくさんあります。

野田
私たちがお手伝いできるチャンスも、ますます多くなっているということですね。