1995年(平成7年)5月23日(火曜日)

米国特殊メンテナンス導入
新市場を創造する起業家精神

建物の寿命はメンテナンスの善し悪しで決まる。環境を重視する時代になり、産業廃棄物を大量に発生することへの批判が高まっている。代わって既存の建物を社会資産として活用する機運が盛り上がってきた。そうした中、ライフサイクルを伸ばしコストを削減するような高効率の特殊メンテナンスの業界が注目されている。その特殊メンテナンスのパイオニアであり、米国の最新技術を次々に導入し、フランチャイズ展開で大きな成功を収めている(株)トータルサービスの山口恭一代表取締役に、経済評論家の長谷川慶太郎氏が同社経営の現状と未来について幅広く聞いた。

経済評論家
長谷川慶太郎氏

長谷川
今、大変業績を伸ばしていらっしゃるようですが、今年度の売上高はどれぐらいですか。

山口恭一
10億円強です。グループ全体では50億円弱です。

長谷川
創業してからは何年目になりますか。

山口恭一
創業は1980年(昭和55年)で、創業からは16年目、株式会社になってからは13期目です。

長谷川
それでは、事業を始めたきっかけは何だったんですか。

山口恭一
同級生がみんないい大学へ行きましてね。社長になれば彼らと同じ土俵に上がらなくて済む、という逃げから始まったのです。
とにかく経営したい、社長になりたいというので、先輩をはじめいろいろな人に相談したところ、経営者には営業型と技術型と2通りあるというのです。技術は難しそうなので営業型を選び、「飛び込みセールスが基本だ」と言われて、飛び込みセールスの会社に中途入社で入りました。4年ほどそこにいて最終的には60人ぐらい部下を任せられるところまでいきました。
そんなとき「汚れる仕事はすたれない」と聞いて……。

長谷川
なるほど、それはそのとおりですね。この言葉が今の業種を選択するきっかけだったんですね。

山口恭一
それまで扱っていた商品が1回売ったら2回は買ってくれない商品だったものですから、リピート・オーダーがあるというところに非常に魅力を感じまして、最初は商店街のインテリア・クリーニングとか、テント洗いとか、そうしたところから始めました。
それから先輩経営者から、「自分の商売のルーツを勉強したほうがいい。それには米国を見なさい」と勧められ、「伸びている企業」と「クリーン・ビジネス」というコンセプトで年に何回か米国に行くようにしました。

長谷川
米国では、多くの経営者が多様な仕事を自分なりのやり方、特徴のあるやり方でどんどん伸ばしていますね。

山口恭一
そうなのです。そんな中から日常的に行わない特殊な部分のメンテナンス、つまり特殊メンテナンスを幾つか発見しました。
米国人で日本の事情をよく知っている人がいて、その人がこんなことを言っていました。
「日本ではビルのガラス窓を毎月一生懸命拭いているけど、なぜ外壁は洗ったりコーティングをして保全しないのか不思議だ。ビルの老朽化を防ぐという、もっと大事なことをやるべきではないか。ガラス窓だけ拭いて外壁を保全しないというのは、車を洗うときにガラス窓を拭いてボディーは何もしないことと一緒だ」と。
これは面白い指摘だと感じました。それで最初に手掛けたのが「スパークル・ウォッシュ」でした。

「スパークル・ウォッシュ」は、1989年米国の業界最大手、スパークル・インターナショナル社(オハイオ州)との業務提携により導入・展開している外装保全事業。この事業は、化学反応を利用した中和洗浄方式で汚れを分解し、建物の外装をきれいにするものである。また洗浄だけでなく外装材の耐久性と美観の維持を目的としたコーティング塗装のメニューもある。
トータルサービスによると、これらの作業はフォード車内にパッケージ化された特許を持った洗浄ユニットで、効率よく行える。
同社は「スパークル・ウォッシュ」を導入して以降、吸音材天井・内壁メンテナンスの「シーリング・マジック」、超音波ブラインド洗浄の「ブラインド・マジック」、あるいは金属の再生保全の「メタル・メンテナンス」など米国の最先端技術を順次導入し、事業展開している。

長谷川
メタル・メンテナンスの企業は、ニューヨークに多いですね。

山口恭一
ベンチャー企業が何社もあります。米国では環境規制が厳しいもので、有機溶剤系の塗料などが使えません。それで無機系塗料などいいものがいっぱいできているのですね。
そうした多くの企業の中に約65年の歴史を持ち、一番古く一番大きいスチュアートディーンという会社があります。そこと何度か交渉し、日本に技術導入して、昨年事業を開始しました。この技術導入によって、昨今増えているアルミのカーテンウォールなどの外装を含めて、ほとんどすべての素材に対応することができるようになりました。

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