話題の会社の経営戦略 トータル・サービス/外壁のクリーニング

「汚れる仕事は廃れない」を信念に急成長
1エリア1社制で堅実にFC展開

「どんなところでもきれいにする」—ーハウスクリーニング、ビルの外壁クリーニングなど清掃サービスの“すきま”市場を開拓してきたトータル・サービスは、高い技術力とFC展開による事業の拡大で急成長を遂げている。

わが国初のドーム球場である東京ドーム。88年3月の完成以来、一切清掃されなかった場所がある。ドームの周囲に庇状に広がる屋根裏のトラス(三角形を組み合わせた骨組み)部分である。トータル・サービスが91年2月に初めて清掃し、注目を浴びた。「『どんなものでもきれいにする』を売り物にしてきたことと、ビルの外壁クリーニングで培われた実績が評価された結果」と山口恭一社長は笑顔で語る。
トータル・サービスは1982年、ハウスクリーニング業として設立以来、あらゆるクリーニング業務に次々と手を広げてきた。88年にはウッドクリーニング、89年には米国のスパークルウォッシュ社と業務提携し、ビルなどの外壁クリーニング分野に乗り出した。これら3分野でフランチャイズチェーン(FC)展開を進め、現在それぞれ95社、45社、61社の加盟店を傘下に抱え、93年2月期のグループ全体の売り上げは45億円に達している。

新たな市場を作り、競合避ける

同社の成長は、山口恭一社長の「ベンチャー精神」を抜きには語れない。現在の主力事業である外壁クリーニングに乗り出したことが、その代表例と言えるだろう。
知り合いの喫茶店のマスターから「うちの換気扇を洗ってくれるなら1万円出してもいいよ」と言われて始めたハウスクリーニング。これと神社や木造住宅などを清掃するウッドクリーニングの2つの事業を順調に展開、売り上げを毎年30%以上伸ばし、89年度の年商は4億7600万円になった。FCも急拡大し、ハウスクリーニングで100社、ウッドクリーニングは45社の加盟店を集めた。
普通はこの2つの事業に専念するだけで十分だと思うだろう。しかし、山口恭一社長は「現状に留まる」という言葉が嫌いだった。ハウスクリーニングを始めるきっかけになった喫茶店のマスターの口癖である「汚れる商売に廃れはない」という言葉を胸に秘めて、クリーンビジネスの分野をとことん極めようと、新たな事業に乗り出したのだ。それが外壁のクリーニングだったのである。
外壁クリーニングとは、移動型ユニット(サービス・カー)の中にパッケージ化されている機械を使って、ビルやマンションなどの外部構造物を洗浄するというもの。洗浄方法は従来の高い圧力で水洗いをする高圧洗浄とは異なり、素材や汚れによって80種類の洗剤

ベンチャー精神旺盛な山口恭一社長

部からの押し付けではなく、加盟店が自由に決めることができるのも大きな特徴だ。
その一方で、ロイヤルティーは売り上げの有無に関わらず、年間150万円と規定している。「顧客を1人でも多くつかむフロンティア精神がないと儲からない」(山口恭一社長)ということを理解させ、自助努力を促すためだという。しかし、ある加盟店の代表者が「2年で採算ラインに乗った」と語るように、固定客の獲得次第で収益をあげるのは比較的容易だ。
ベンチャー精神の衰えない山口恭一社長は、さらに新しいクリーンビジネスへの挑戦を始めた。ブラインドの洗浄である。
米国のビジネス・コンセプト社が製造するブラインド洗浄装置「ブラインド・マジック」の独占販売権を取得し、大きなブラインドや換気扇、空調フィルターなどを洗浄する。昨年11月に開始した事業だ。
ブラインド・マジックは、ワゴン車で移動可能な2漕タンクで構成され、超音波の波動と洗剤、お湯を使って現場で洗浄作業を行う。「今まではブラインドをわざわざ工場に持ち運んで洗うか、スポンジやブラシを使うなど手作業に頼っていて、手間やコストが非常にかかった」(山口恭一社長)というように、外壁クリーニング同様すきま市場を狙ったビジネスだ。
汚れを落とすだけでなく、除菌や消臭、カラーコーティングを手掛ける天井のクリーニング事業も今年の3月から開始した。これら2つの新規事業もFC展開し、2000年にはグループの年商を現在の2倍以上の100億円まで引き上げる計画だ。

10年後には第2の人生を

今でこそ“功を成した起業家”の仲間入りを果たした山口恭一社長だが、「20歳の頃には劣等感の固まりだった」という。大学受験に失敗して2年間の浪人生活を送っていた時、周りの人間に比べて自分が小さく見えたからだ。
しかし、常に前向きにものを考える山口恭一社長は、暗中模索の中で彼なりの生き方にたどり着いた。「サラリーマンになったところで出世できる見込みはない。しかし、経営者になれば、大学に進学した連中を追い抜くことができる」。
そう固く信じた山口恭一社長は、ビジネス書を立ち読みしたり、人から話を聞いて「どうすれば経営者になれるか」を研究したという。
こうした劣等感をバネに始めたビジネスが、「10年後をめどに店頭公開を目指す」(山口恭一社長)ところまで大きくなった。しかし、山口恭一社長は「公開の準備を整えたら、優秀な人材にバトンタッチして第2の人生を歩みたい」と、現在の成功への執着を見せない。
「第2の人生」とは、金融機関と組んでベンチャーキャピタルを作ること。ベンチャー精神あふれる経営者を支援して「第2の山口恭一社長」の誕生を願っているようだ。
(小林 充)

●トータル・サービスの会社概要
本社 東京都新宿区西新宿7-5-10
電話03-3363-1155
社長 山口 恭一氏
設立 1982年5月
資本金 3000万円
売上高 10億8500万円(93年2月期)
従業員数 45人
業務内容 ハウスクリーニング、外壁クリーニングなどの特殊クリーニング

■トータル・サービスの業績推移
(年度の下のカッコ内はグループ年商)

売上高(百万円)
1200
1000
800
600
400
200
0

経常利益

売上高

経常利益(十万円)
350
300
250
200
150
100
0

87(22億)
88(25億)
89(30億)
90(34億)
91(40億)
92年度(45億)