DKMマネジメントレポート Vol.330 1995 JULY

米国から新しいクリーンビジネスを導入しフランチャイズ展開で急成長を遂げたトータルサービス

会社概要
名称 トータルサービス
設立 昭和57年5月(創立昭和55年1月)
代表者 代表取締役社長 山口恭一
資本金 3000万円
売上高 10億円
本社 〒160 東京都新宿区西新宿7-22-12
泉ホシイチビル
TEL 03-3363-1155(大代表)
従業員数 本社61名、技術者(グループ)266名
関連会社 株式会社トータルサービス東京
加盟店数 214社
事業内容
スパークル・ウォッシュ、シーリング・マジック、ブラインド・マジック、バスタブドクター、ハウスクリーニング、ウッドクリーニングの各全国フランチャイズ本部、ノンスライド代理店本部、特殊メンテナンス直営工事、特殊車両・機械の輸入販売、各種ケミカル・コーティング剤の輸入販売。

「フランチャイジーの成功は、起業家だという自覚をもつことです」山口恭一社長

アメリカからフランチャイズ・システムとともに新しいクリーン・ビジネスを導入して、ビルの外壁、内壁、天井などの特殊メンテナンス分野に大きなニーズがあることを証明してみせた若き起業家の率いる(株)トータルサービス社。そのきっかけは「汚れる商売はすたれない」という言葉だった。

どこもできなかった東京ドーム屋根裏トラスのクリーニングで一躍有名に

「ニーズなんて、はじめから存在するもんじゃありませんよ。例えばコカコーラ。あんな変わった味の飲料水に対するニーズがあったと思いますか。最初に創った人だって、まさか世界中の人々に愛飲されるとは思ってもみなかったに違いありません。CNNだってそうですよ。
ニュースだけしか放映しないケーブルテレビがメジャーのマスコミになるなんてだれも考えなかったんじゃないでしょうか。
よく勘違いする人がいますが、ニーズは探すものではなく、創り出すものなんです。新しいもの、変わったものを創造し、それが世の中に受け入れられたとき、はじめてニーズがあったといえるんです」
独特の経営哲学を披露するのは、株式会社トータルサービス社長の山口恭一氏。
氏は、アメリカのニュービジネスを日本に取り入れ、数々の成功を収めたアントレプレナー(起業家)の若き旗手として、ベンチャービジネス関連の雑誌や書物にたびたび登場する。
マスコミが紹介する山口恭一氏のプロフィールはおおよそ次のようなものだ。
昭和30年、福島県生まれ。上京後、レジャー会員権の販売会社に就職。1年足らずで営業トップの成績をおさめ課長になるも、昭和55年に脱サラで独立。店舗を中心としたインテリア・クリーニング業「山口商会」をアルバイト学生2人を使って創業。その後、米国におけるクリーン・ビジネスとフランチャイズ・ビジネスのリサーチを実施した結果、「日本のビルメンテナンスのうち、とくにビルの外壁、内壁、天井などの特殊メンテナンス分野がアメリカに比べて相当遅れている」ことを痛感。
「スパークル・インターナショナル」社など米国クリーン・ビジネス業界大手各社と提携。フランチャイズ制を本格的に採用し、わが国における建物の内外装に関するクリーン・ビジネスのパイオニアとなる。現在、フランチャイズ・グループの年商は50億円、全国に約210社のフランチャイジーを擁する。
新規事業に関心のある経営者なら「トータルサービス」という会社の名前を1度や2度耳にしたことがあっても不思議ではない。同社の広報資料によれば、最近5年間にトータルサービスに関する記事を掲載した新聞、週刊誌などの数は約400。その他、NHKはじめテレビ各局も同社の話題を多数放映している。
建物のクリーン・ビジネスと聞くと、いわゆるビルメンテナンス事業を思い出すが、トータルサービスの取り扱う事業は、従来のビルメンテナンスと同じものではない。そのコンセプトは「竣工時の強度や美しさを保全しながら、建物のライフサイクルを伸ばす」というもの。
トータルサービスの名を一躍有名にしたのは、平成3年2月に同社が実施した東京ドーム屋根裏の三角形を組み合わせた骨組み(トラス)の清掃。ドーム誕生以来3年目にして初のクリーニングということで話題になったが、東京ドームがトータルサービスに白羽の矢を立てたのは、技術的にこの清掃ができる業者が、同社以外に存在しなかったからだといわれている。
作業はすべて夜中に実施。昇降装置のついたクリーニング用トラック2台を使って、トラス部分に様々な種類の洗剤や洗浄水を吹き付ける方法を使い25日間で完成。これを仕上げたことで同社の外装保全システムが高く評価されることになった。

外壁、天井、ブラインド、バスタブ……なんでもキレイにしてみせます

「わが国のビル・メンテナンス技術は相当遅れています。日本人はもともと清潔好きな民族。木造建築なら年に1、2度は大掃除をして家の内外を磨きあげ、畳替えや障子・襖の貼り替えまでするのに、ビルとなると外壁や天井が汚れていても平気なんですね。これはビルを洗ってキレイにすることは不可能だと諦めていた

3種類の特許を持つ洗浄システムがフォードエコノラインの中にパッケージされている

そんな日本人の“神話”に終止符を打ったトータルサービスのクリーン・ビジネスは外装保全システムに止まらない。大きく分けると次の5種類となる。

(1)スパークル・ウォッシュ(外装保全事業)
東京ドームで使われたのと同じシステム。移動型ユニット洗浄機と特殊な洗浄剤で外壁の汚れを落とし、コーティング塗装によって外装材を保護する。従来の高圧洗浄方式と違い、2種類の洗剤を混合することによって生じる化学反応を利用した中和洗浄方式なので、建物をいためずライフサイクルが飛躍的に伸び、長期間にわたって美観が維持できるという効果がある。技術は米国スパークル・インターナショナル社より導入、トータルサービスの基幹事業になっている。

(2)メタル・メンテナンス(金属の再生・修復・保全)
アルミのカーテン・ウォールなどの外装や、エレベーター、エスカレーターなどの内装の金属表面に発生する塗膜劣化、酸化腐食、キズを新築当時と同じ状態に回復し、さらに超耐候性被膜コーティングを施して、表面を保護するビジネス。米国スチュアート・ディーン社より導入。

(3)シーリング・マジック(吸音材天井・内壁メンテナンス)
除菌・消臭効果を持つ天井材・内壁のシミ汚れのクリーニングと、吸音効果・燃焼遅延効果を維持したままで着色できる天井と内壁のメンテナンス。これも米国クーステック・グロー・インターナショナル社との業務提携から生まれたもの。従来のペンキを塗り重ねる方法と異なり、環境や産業廃棄物の問題が発生することはない。新規の張り替えに比べ、はるかに低いコストで同様の効果が得られる。

(4)ブラインド・マジック(超音波ブラインド洗浄)
オフィスや家庭のブラインド、空調フィルター、換気扇、照明カバーなどの汚れを超音波を利用し、温水・特殊洗剤を使って細かな部分までスピーディーに落とすビジネス。移動可能な2層式タンクによる洗浄なので、設置された場所での洗浄が可能。

(5)バスタブドクター(バスルームの再生・コーティング事業)
米国のドワイヤーグループ社との提携によって実現したバスルームや洗面台など、ローコスト、短期間でよみがえらせるリフォーム技術。

ほかにこの4月から、最新の各種ケミカルコーティング剤を輸入し、直営方式で販売店を展開するプロダクト事業部を発足させた。第一弾として床面滑り止め加工「ノンスライド」を販売開始。
右にあげたクリーン・ビジネスは、いずれもアメリカで事業化に成功したニュービジネスばかり。冒頭の山口恭一氏の言葉を借りると、トータルサービスがこれらを導入するまで、日本にはビル全体を洗ってキレイにしたいというニーズが存在しなかったことになる。
したがって、日本のビルメンテナンスといえば、床や窓ガラスを清掃し、空調設備の保守点検をすれば、それで十分だった。汚れた外壁や天井をキレイにするには、ペンキを塗るか、張り替えるか、のどちらかしか頭の浮かばなかったのである。
その証拠に、同社が日本で最初にスパークル・ウォッシュなどのクリーン・ビジネスを導入しても、その分野で大手ビルメンテナンス業者とほとんど競合することなく、独走態勢で快進撃を続けることができたのである。

日本が学ぶべきビジネスがアメリカにはまだまだたくさんある

「上京して以来、私は初めから経営者になることだけを志しました。ビジネス書を読み、人の話を聞き、経営とは何かを徹底的に研究したものです。就職したのも、サラリーマンの立場から経営というものを学ぶためでした。とにかく会社経営がしたくて、経営者になれるのでしたら、どんな商売でも良かったんです」
会員権販売で抜群の成績をあげた山口恭一氏が、独立に際してお門違いとも思えるクリーン・ビジネスを選ぶことになったのは、知人の「汚れる商売はすたれない」という言葉がきっかけだったという。
しかも調べてみると、クリーンビジネスには、
(1)リピート・オーダーがあり、
(2)場所を選ばず、
(3)在庫を持たなくて済み、
(4)景気に左右されない
…というメリットがある。独立資金に乏しい氏にはうってつけのビジネスだった。