企業家のための経営情報誌 日経ベンチャー1999.5

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優秀な中堅社員が退社したいと言い出した(小売業社長)

いずれ会社を担ってもらおうと期待していた中堅社員が突然、「会社を辞めたい」と言い出した。期待していただけに残念だ。会社に残ってもらいたいが、どう対応したらいいか。

回答者
トータルサービス社長 山口恭一

会社を辞めようとしている理由を探ることから始めてください。その社員は多分、成果が給与や人事に反映されていないと思い、不満が募っていたのではないでしょうか。
もしそうなら社員1人ひとりの成果が一目でわかるようにし、待遇にきちんと反映する仕組みをすぐにでも導入することをお勧めします。
当社では、部門別採算性を取り入れ、優秀な社員が定着するように努めています。部門ごとに粗利益にもとづいた目標を設定し、それを上回った分の25%を部門責任者に還元しています。
例えば、責任者を含めて4人のスタッフがいる部門では、全員の年間人件費の合計が1800万円なら、その3倍の5400万円の粗利益を出すことを最低限の目標にしています。この目標額を超えたら、超えた分の25%を報奨金という形で部門責任者に支払います。
5400万円という金額は、次のような計算からはじき出します。人件費の合計が1800万円とすると、雇用保険や社会保険、通信費、交通費などの合計もおよそ1800万円になります。さらに、総務や経理などの間接部門や役員の給与や経費もほぼ同額かかります。つまり、直接部門に携わる人件費の3倍の金額を会社は経費として支払っている計算になります。
退職を希望している社員が「こういう報奨金だけではもの足りない」と言うなら、分社した会社の責任者に据えるという方法もあるでしょう。
それでも、退社を希望するなら、他の社員を引き連れて貴社と競合する会社を興すことがないよう予防策を講じておくことが大切です。
会社を辞めて貴社にとって不利益になる情報を流したり、貴社の顧客を奪い合ったりする事業を展開するならペナルティーを課すことも念頭に置くべきです。給与を支払ったうえ貴社のノウハウまで教え、一人前に教育してきたわけですから当然のことだと思います。
もちろん、現実には退職していく社員にペナルティーを課すことはできないでしょう。ただ「いざとなったら争うぞ」という強い姿勢を示しておけばいいのです。(談)

NIKKEI VENTURE 1999.3