総力特集 ゼロからのビジネス戦記

「汚れる商売は廃れない」のセオリーをつらぬく洗浄ビジネスの先駆者

あのギョウカイ、この業界「起業の達人」列伝

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社長 山口恭一

やまぐち・きょういち 1955年7月生まれ、43歳。福島県出身。県下有数の進学校を卒業後、東大を目指すが受験に失敗。レジャー会員権のセールスマンをしながら、事業家を志す。「汚れる商売は廃れない」と聞き、店舗の洗浄事業に乗り出す。米国でフランチャイズビジネスを知り日本に導入する。創業以来連続黒字を持続している。

「汚れる商売は廃(すた)れない」という言葉を耳にした山口恭一氏が、レジャー会員権の営業マンから独立を決意したのは25歳の時だった。建物の外装クリーニングという典型的な3Kビジネスだが、現在、直営店のほかに300社ものFC加盟店を持つほどの不況知らずである。

飛び込み営業の達人

東大卒の公務員を父に持つ私が、公務員やふつうの会社勤めのサラリーマンになるのを嫌だと思ったのは、大学受験に失敗して浪人中のことだった。
小学校から高校までは「なるべくみんなと同じように」と、ごく平凡な学校生活だった。高校は福島県有数の進学校で、私もみんなと同じように東大を受験したが失敗。東京の予備校に通い、2浪したけれども受からなかった。
周りは公務員やサラリーマン志望ばかり。そういう人たちとこれから一生比較され続けることができるのか。比較される以上、誰だって優位に立ちたい。けれども同じようにサラリーマンになって優位でいられるのか。
自問自答したあげく、彼らとは全然違う土俵に立つことだと思った。サラリーマンになるのではなく、自分自身で商売をすることだと思った。
商売をするに当たり、ある人に相談した。すると、商売をするには何かの力を持っていないとダメだという。営業力、技術力、資金力……。これらの何かがないと、商売を自分で始めるのは難しいというのだ。
が、私には何もない。それならまず「営業の達人」になれと言われ、それを目指した。
営業の原点は、飛び込みセールスである。それをやって自分自身を売り込める人間にならないと、ものにならない、とも言われた。
私が入社した飛び込みセールスの会社は、レジャー会員権の販売会社だった。入って最初の3ヵ月間はまったく話にならなかった。ところが4ヵ月目から売れ始め、6ヵ月目に2人部下をもらい、1年後には15人以上の部下を持った。
入社したのは20歳と11ヵ月だったが、22歳になった時には年収1000万円を超えていた。いまは払込税額1000万円以上を高額所得者というが、当時は年収1000万円で十分高額所得者に仲間入りできた。
この会社に入ってすぐ気づいた。営業マンは勉強しない。営業部門は、勉強の嫌いな人間の吹き溜まりである。ならば勉強すれば必ず勝てる。勉強して商品知識を身につけ、自信を持って売り込めば必ず売れる。
事実そのようにして営業成績を伸ばすことができたが、この会社では、営業だけでなく部下の育て方も勉強した。自分で売るだけでは、ただの行商人である。いかに部下に売らせるかが企業経営をする時の要諦になる。部下に売らせるにはどうすればよいか。営業に関する知識や技術力を引き上げ、仕事の質を高めるとともに、いかにヤル気を起こさせるかを学び取った。
この会社には結局、4年半いた。まだ若かったので肩書は課長だったが、営業部ではナンバースリーで、60人ほどの部下がいた。年収は1400万円ほどだった。
入ったときには、10年くらいかけてみっちり営業の勉強をし、30になったら独立しよう、と漠然と考えていた。しかし、営業成績が比較的良く、ちょっとのぼせ上がっていたせいもあって早く起業したくなっていた。

開業資金に1000万円調達

大学進学を断念し就職するときは、周りに反対された。そして、こんどは会社を辞めて独立すると言ったら、「そんな高収入を棒に振るのはもったいないから辞めるな」とまた反対。何をやっても反対される。世間なんて所詮いい加減なものなんだな、ということもこのとき勉強した。
会社を辞め、さて何を始めるかというときも、いろいろな人に相談した。そのときある人が言った。「汚れる商売は廃れない」。それを聞いて、私は「これだ!」
早速、汚れる商売とは何かを調べた。こうして行き着いたのが店舗の出張クリーニングである。商店街のテントや絨毯を洗ったり、店舗の汚れを落とす仕事だ。これなら会社事務所(店舗)を構える必要はなく、設備投資も少なくて済み、少人数でやれる。
とはいえ車や機材をローンで購入する費用も入れ、開業資金は1000万円を要した。前の仕事が高収入だったとはいえいざ、独立しようと思うと手持ち資金は少なかった。親からの借金も含め、なんとか1000万円を用意した。いまなら3000万円くらいに相当すると思う。

経営者に休日はない

事業はやはり、営業を経験したことが大きかった。注文というのはコンスタントに取れるわけではない。ところが、営業経験やその知識のない人は、取れなくなると急に落ち込み、それを商品や世の中のせいにして泥沼に落ち込む。しかし営業を知っていると違う。売れないのは自分のせいだと分かっているので、いろいろ工夫をする。まして自分で経営する立場に立つと、逃げ場がないので人一倍努力をする。
26、7のころだが、ひょんなことから若手起業家というのでテレビで紹介され、それが雑誌に波及、急に人脈が広がった。
大手上場企業やベンチャーの雄といわれるような経営者にも紹介され、いろいろなアドバイスをいただいた。
そんな中に、一度アメリカを見たらどうかというアドバイスがあった。早速、それに従って全米を歩いたが、そのポイントは、伸びている企業のリサーチ、クリーンビジネスのリサーチ、フランチャイズのリサーチ、に置いた。
何回か渡米してリサーチを繰り返しているうち、外壁洗浄最大手のスパークル・インターナショナル社のフランチャイズに出会った。86年のことである。契約締結し日本に導入、説明会を開いて法人中心に加盟店を募集したところ予想外の反響を呼び、いきなり10数社と契約できた。
以来、外壁だけでなくバスルーム、車輌など6つの業種に拡大、加盟店数も全国に300社を超えた。開業以来、一貫して黒字経営である。
2005年には10業種、1000加盟店体制にする目標である。
当社のFCは無店舗、サイドビジネス型。建設業者が副業としてバスタブドクタ
ロイヤリティーも3万〜5万円プラス売上高の5%と低い。途中解約後に違約金を取ることもないので加盟しやすい。
日本のフランチャイズ・ビジネスは、アメリカに比べ20年ほど遅れているといわれるほどで、将来的にますます成長が期待できる。
(構成・猿沢 保)

取材メモ

●事業内容
外壁洗浄・コーティング事業、バスルーム等のカラーコーティング事業、車輌内外装の補修・修復・再生事業、吸音材天井カラーコーティング事業、超音波ブラインド洗浄事業、ハウスクリーニング、ウッドクリーニング。FCと直営で展開。FC加盟店は300社。売上高60億円強(96年2月期)。
●設立
1982年5月(個人営業「山口商会」での創業は80年1月)
●資本金
7800万円
●従業員
344人
●所在地
東京都新宿区西新宿
●株式公開
店頭登録・2002年の予定

「一冊まるごと起業の達人」