企業家のための経営情報誌 NIKKEI VENTURE 日経ベンチャー 1998.7

新規事業をどう進めるべきか迷っている(機械メーカー社長)

新製品を開発しても売り上げや利益に結びつかず、業績は悪化の一途をたどっている。何か新しい事業を手がけることで、業績を盛り返したいと考えているが、その際、どこに注意すべきかよくわからない。

回答者
トータルサービス社長
山口恭一

私自身の経験からいっても、新たな事業に進出する際には、次の4つの視点から検討する必要があります。
第1に、新たな事業が10年たっても顧客に支持される商品やサービスなのか、ということです。今は有望に見えても、長期的に見て社会的ニーズが低い事業は、いずれジリ貧になってしまいます。経営の柱には育ってくれません。
第2に、儲けることではなく、損をしないことに着目することです。たとえ、新規事業が失敗しても、再度チャレンジできる体力を残しておかなければなりません。
当社は93年に、米国で流行していた空調ダクトのクリーニング事業への進出を検討しました。しかし、日米の建築物の構造や環境基準には違いがあり、失敗した場合の損失額が読めなかったので、棚上げしました。米国で流行しているからと、安易に手を出していたら、大きな痛手を受けたでしょう。
第3に、新規事業の責任者には、ある程度社歴が長い社員をつけることです。新規事業となると、つい社外の人材に頼りがちですが、そうした人材は壁に突き当たると自分の殻に閉じこもり、最終的には辞めてしまう恐れがあります。
気心が知れた社内の人間であれば、必要に応じて経営者のもとに報告、相談に訪れます。会社への帰属意識が強いので、少々叱ったところで辞めたりはしません。
また、責任者に据えた社員には「休みを返上してでも働け」と命じるべきです。新規事業の成否は、事業に携わる人間の情熱と仕事の量に比例するからです。「成功した暁には、十分報いる」ということを伝えておくことも大切です。
第4に、経営者自身が新規事業にどれだけの時間を割けるかに応じて、新規事業に投じる予算を加減することです。経営者自ら営業活動できるような状況なら、失敗しても再挑戦できる範囲内でたっぷりと資金を投入してもかまいません。
一般に、不況の時に始めた新規事業は、事業計画がしっかりしたものが多いようです。資金を集めにくいので、少ない資金を効率的に使おうとするし、売り上げ予測などもより慎重になるからです。その意味では、いまがチャンスです。
(談)