T9611P01 成長の軌跡

ニーズは、探すものではなく、創り出すものだ

トータルサービス社長
山口恭一氏

アメリカから新しいクリーン・ビジネスを導入し、特殊メンテナンス分野に大きなニーズがあることを証明して見せた若き起業家・山口恭一社長の率いるトータルサービス。
そのきっかけは「汚れる商売はすたれない」という言葉だった。

経営者を志し徹底的に研究

——事業を始めたきっかけはなんですか。
「高校が進学校だったのですが、私は、社長になれば彼らと同じ土俵に上がらなくてすむ、という受験戦争からの“逃げ”から始まったのです。
受験勉強でいくら頑張っても、友人たちとの差は埋まらないと気づいたときから、必死にビジネス書を読み、人の話を聞き、経営とはなにかを徹底的に研究しました。とにかく、経営者になれるのであれば、どんな商売でもよかったのです。
経営者には営業型と技術型と2通りあると教わり、私は技術を持っていなかったので、必然的に営業型を選びました。『営業の基本は飛び込みセールス』だといわれて、飛び込みセールスの会員権販売会社に中途入社で入りました。4年ほどそこにいて、最終的には60人くらいの部下を任せられるところまでいきました。
その後、予定を早めて独立し、なにをやろうかと考えていたとき、先輩経営者から『汚れる商売はすたれない』ということを聞いて、クリーン・ビジネスに注目しました。調べてみると、クリーン・ビジネスには、リピートオーダーがあり、場所を選ばず、在庫を持たなくてすみ、景気に左右されない、といったメリットがありました。独立資金に乏しい者にとって、うってつけのビジネスだと思いました」

特殊メンテナンスに注目

——いつ創業したのですか。
「1980年に店舗を中心としたインテリア・クリーニング業『山口商会』をアルバイト学生2人を使って創業しました。場所は、東京の高田馬場です。大手のビルメンテナンス業者が手を出せないような床、風呂、テント、看板から換気扇の掃除まで、なんでも手がけました。ほとんど休みもとりませんでした。
設立後2年で株式会社トータルサービスとして改組し、それを機に市場を一般の家庭にまで広げ、ディーラー制(代理店製)を採用し、ハウスクリーニングの代理店の募集を始めました。
その後、いろいろな先輩経営者から『自分の商売のルーツのアメリカを見なさい』とすすめられました。そこで、先輩経営者のアメリカの事務所を活用させてもらい、アメリカのクリーン・ビジネスの動向を探りました。そして、アメリカにはどういう種類のクリーン・ビジネスがあり、どういう歴史があるかなどを知ったのです。
アメリカには、住宅クリーニング、ジュータンクリーニング、ビルメンテナンスなど、さまざまなクリーン・ビジネスがありますが、私が注目したのは、特殊メンテナンスといわれる業態です。これは、通常のビルメンテナンスが毎日床などの掃除を行うのに対し、毎日は行うことはない外壁のクリーニングや吸音材のメンテナンスなどのことです。それで、クリーニングとメンテナンスは違うということがわかりました。
アメリカ人で日本の事情をよく知っている人がいて、『日本ではビルのガラス窓を毎日一生懸命拭いているけど、なぜ、外壁は洗ったりコーティングをして保全しないのか不思議だ。ビルの老朽化を防ぐという、もっと大事なことをやるべきではないか。ガラス窓だけを拭いて外壁を保全しないのは、車を洗うときにガラス窓を拭いて、ボディーはないもしないことといっしょだ』といっていました。
これはおもしろい指摘だなと感じました。それで、1989年にスパークル・インターナショナル社と業務提携し、『スパークル・ウォッシュ』のフランチャイズ展開をスタートさせました」

アメリカから最先端技術を導入

——「スパークル・ウォッシュ」とは、どんな事業ですか。
「これは、建物の外装を洗浄するとともに、外装材の耐久性と美観の維持を目的としたコーティング塗装も同時に行うサービスです。外装材や環境にダメージをあたえない画期的なシステムで洗浄します。これにより、建物の劣化を防ぎ、ライフサイクルを80年、100年と大幅に延ばすことができます。
コーティング剤を含めたケミカルは、素材に応じた55種類以上を用意しているため、建物だけでなく、道路、トンネル、橋梁、工場の床や天井、機械まで、きわめて大きな市場が見込まれています。営業先は、設計事務所、ゼネコン、ビル管理会社、塗装・防水会社など、多岐にわたっています。
この他にも、『メタルメンテナンス』(金属の再生・修復・保全工事)、『シーリング・マジック』(吸音材天井クリーニング・カラーコーティング)、『バスタブドクター』(バスルームなどのカラーコーティング再生)、『ブラインド・マジック』(超音波ブラインド洗浄)などの事業も展開しています。いずれも、アメリカの最先端技術を導入したものです」

——ニーズは必ずあると考えましたか。
「ニーズは、はじめから存在するものではないんですよ。たとえば、CNNの場合も、ニュースだけしか放映しないケーブルテレビがメジャーのマスコミになるなんてだれも考えなかったのではないでしょうか。ニーズは、探すものではなく、創り出すものなのです。