月刊経営塾 連載<13>フューチャーカンパニー物語 トータルサービス

受験戦争の落ちこぼれ男が始めた米国流3Kビジネス

「日本人はガラスは熱心に拭いているが、外装はさわらない」。あるアメリカ人の言葉だ。実はこの言葉にこそ、建物の外装クリーニングというニッチ(隙間)産業のヒントがあった。そして、いち早くその産業に目を付けた一人の男がいる。それが、FC(フランチャイズ)制クリーン・ビジネスのフロンティア、トータルサービスの山口恭一社長だ。

予備校生から飛び込みセールスマンに一転

▼アメリカでは2000億円市場

「日本ではまだ、外壁を再生して長く使用しようという意識がビルオーナーの中で弱い。ただ、アメリカではメタルメンテナンスの市場は2000億円に達しており、日本でも潜在需要は相当あると思う」と、トータルサービス社長の山口恭一氏は言う。さて、「メタルメンテナンス」とは、あまり聞きなれない言葉だが、一体、どんなビジネスなのか。
最近、ビルの外装にアルミやステンレスなどの金属素材が使われるケースが増えている。金属独特の風合いや、燃えにくい点が評価されているためだ。だが、金属素材はサビに弱く、年月が経てば劣化が進むという弱点もある。都会では排気ガスや酸性雨にもさらされ、劣化が思った以上に早い。そこで、メンテナンスが必要になるのだが、今までは単に汚れを落としたり、塗装し直す程度で、キズや腐食部分を元に戻すようなメンテナンスはなかった。
トータルサービスはそこに着目した。アメリカでビルメンテナンスに60年以上の歴史を持つスチュアート・ディーン社と業務提携し、劣化した金属の表面を回復し、サビないようにコーティングするという事業を始めた。これが、「メタルメンテナンス」だ。
ところで、トータルサービスは、金属外壁以外の外壁クリーニングについても6年前から手掛けてきた業界のエキスパート。このほか、オフィス・ブラインドの洗浄や、最近では浴槽・浴室のリフォームなど、クリーンビジネス全般でFC展開を進めている。現在の売上げ規模は、約10億円。また、全国120店舗あるFC店を含めたグループ全体の売上高は、今期は50億円ほどになる。
「2000年までには店頭公開まで達成し、社員数も現在の2倍にあたる100人前後にしたい」と、同社の広報担当者は言うが、15年前の創業時には「そんな計画さえも立てられなかった」と、山口恭一氏は言う。

▼大学進学を諦め経営者を志す

その山口恭一氏は、先月末に40歳になったばかり。高校までを出身地の福島県福島市で過ごし、国立大学進学を目指す。
「将来の目標?そんなものはありませんよ(笑)。みんなが行くから、俺も行くという感じでした」と、山口恭一氏。だが、大学受験には失敗、しかも二浪まですることになる。周りの仲間が次々と、有名大学に合格していくのに、自分だけが取り残される形になったため、「生来の楽天家」と自称する山口恭一氏も、さすがに落ち込む。